免疫療法について
ごあいさつ
現在、がんの三大治療といわれている、手術、抗癌剤治療、放射線治療で効果が見いだせなくなった患者さんは、まだ癌と戦える体力があるにも拘らず、緩和治療に回されるという現状があります。
この三大治療から見放されて、しかし緩和治療に行くにはまだ早過ぎる患者さんを所謂がん難民と称しており、現在がん患者の53%、68万人ががん難民となっているといわれています。現在3人に1人ががんといわれていますが、将来的には2人に1人の時代がくるといわれていますので、さらにがん難民の患者が増加するものと考えられます。
こういうがん難民を救う第4の治療法として、現在免疫治療が有望視されています。私も、1992-1995年まで米国のNIH(NCI 米国国立癌研究所)に留学して腫瘍免疫を学びました。
帰国してからは、熊本大学第二外科(現消化器外科)において養子免疫療法(がん患者からリンパ球を採取してこれを体外で刺激増殖させて患者に返還する治療)を行って参りました。今回、東京のリンフォテック(白山通りクリニック)と連携して、当医療センターでも活性化自己リンパ球療法を行うことができるようになりました。
免疫力が低下した状態では、抗癌剤治療も放射線治療も効果を発揮できないこと、また手術して術後に抗癌剤治療などを行って完全にがん細胞を切除できたようにみえた場合でも、その後免疫監視機構が働かなければ長生きができないことが報告されており、このことは、免疫機能を保つことがすべての癌治療の基本であることを示唆しています。
そういう意味では、免疫治療はがん治療中何らかの形で継続すべきものと考えます。
我々は、術後の再発防止を希望される方や三大治療から見放されたがん難民の方々に、三大治療以外の選択肢を提供できるようになったことを嬉しく感じております。こういう患者さんたちに今後も有効な治療法を提供できるように努力精進していきたいと考えております。
活性化自己リンパ球療法について
私たちの体にはがん細胞が発生するとそれを認識して攻撃・排除する機能を持つリンパ球が存在しています。成人では毎日3000〜5000個の細胞ががん化しますが、それはこのリンパ球によって排除されています。
しかし、生体の免疫機能が低下している場合や、がん細胞がこれらの免疫システムから認識されずに逃れるためのさまざまな方法を駆使して増殖する場合には、がんは免疫監視システムをすり抜けて成長し臨床的に認識されるようになります。直径1cmの早期がんでも10億個のがん細胞から成っていると云われています、ましてや進行がんはさらに大量のがん細胞からなっています。こういう状態になると、生体内のリンパ球だけではがんと認識できても攻撃して排除することは難しくなります。活性化自己リンパ球療法は自己(患者さん)から採取した血液からリンパ球を分離し、インターロイキン-2(IL-2)と抗CD3抗体で刺激することにより、活性化増殖させた大量のリンパ球を患者さんに投与しますから、強力にがん細胞を攻撃して排除することができます。
しかし、生体内に大量のがん細胞がすでに存在するような状況(進行癌や再発癌)では、がん細胞自らが増殖しやすい環境を誘導(免疫抑制)している可能性が高いため、癌の三大治療である手術、抗癌剤、放射線でできるだけがん細胞を減少させてから免疫治療を行った方が効果的と考えられます。免疫不全マウス(免疫が働かないマウス)では、放射線治療も抗癌剤も効果を発揮できないということがNatureという科学雑誌に報告されています。
このことは、免疫機能を保つことが放射線治療や抗癌剤治療がうまく働くためにも必要不可欠なことを示唆しています。活性化自己リンパ球療法は、手術後の再発予防や、再発癌や手術不能の進行癌に対する直接的殺細胞効果が期待されますが、その他にも抗癌剤治療や放射線治療の効果を上げるのにも有効であると考えられます。免疫を正常に保つことは、すべての癌治療の基本であるとも言えるのです。
活性化自己リンパ球療法は、元々備わっている細胞を使った治療のため、アレルギーをはじめ、重篤な副作用がないのが特徴です。
当院はこの領域で先駆的な役割を担ってきた、白山通りクリニックグループの熊本県での窓口として、活性化自己リンパ球療法を提供しています。当院で受けることができる治療は、白山通りクリニックグループの治療に準拠しています。治療の内容、成績など、その一部をこのホームページ上にも載せていますが、詳細は以下のホームページをご参照下さい。
白山通りクリニック http://www.hakusan-s.jp/